2019.9[一粒のお米には七人の神様がいる]

(米)という漢字は、八十八と書きます。なぜこの様な漢字になったかと言うと、昔お米を作るまでに88行程の作業があることから、その行程を用いて、(米)という漢字が生まれたと言われています。
私の実家は農家であり、先日、我が家でも稲刈りを終え、新米が仕上がり、広い田んぼを前に、秋の実りを実感しホッとしていました。いつも変わらないこの風景を見ていると、幼いころのことを思い出しました。
私の家は、両親が共働きだったこともあり、祖母が食事を作ってくれることが多くありました。私は末っ子であり、どんな時も「謙ちゃん、謙ちゃん。」と優しい祖母ですが、そんな祖母にも末っ子パワーが通じないことがあります。それは、ごはん茶碗に一粒でものお米がくっついている時です。
「一粒のお米には七人の神様がいるんだよ!」
「お米を残したら目がつぶれるよ!」
と、少し怖いことも良く言い聞かされていました。近くで農作業をする姿を見ていたからこそ、幼心に“お米を粗末にしてはいけない”とは分かっていても、「七人の神様がいるって、七福神のことかな?だったら会ってみたいな!」など、当時は祖母が伝えたいこととは全く別のことを考えていましたし、祖母の想いを知ろうともしていませんでした。

そんなことを思い出しては微笑んでいると、ちょうどそこに祖母がいたので、この話をすると、祖母も笑いながら、理由があって私に言っていたと、話してくれました。
「一粒のお米には七人の神様がいる」の神様は、私が思っていた七福神ではありませんでした。水、土、風、虫、雲、太陽、そして作る人の七つの意味があるそうです。
水、土…水豊富な水と栄養分の豊かな土は、稲が良く育つ水田をつくる為の水と土
風…1日しかない稲の開花しない間に受粉を行う為の風 
虫…虫はお米を食べる害虫の事ではなく、その害虫を食べる、トンボや蜘蛛の虫
雲、太陽…太陽の光と光を当てすぎない為の雲と太陽
作る人…昔は88の工程を経て米作りをした作る人の苦労
米を育てる米作りにはこの七つの要素が一つでも欠けてしまうと、お米を作ることは出来ないとのことでした。「お米を残すと目がつぶれるよ」や「罰があたるよ」など言葉は、食べ物を粗末にしないようにという想いでしょう。少し小さく見える祖母の背中も、私には今でも大きく見えます。
私は2年前、父を亡くした時から、兄、母の3人で米作りを行っております。父の大きな背中にはまだまだ追いつくことはできませんが、父がずっと見てきた景色を同じ目線で見られていることを嬉しく思っています。
現在では機械化が進み、昔の米作りに比べて楽になってはいますが、米作りの大変さや苦労は今も変わりません。だからこそなのか、くりーふのキャンプ等でお米を残している姿を見ると、いつもにこにこの“桃先生”も、「罰があたるよ!」と、祖母が乗り移ったかというくらいになってしまいます。その時は、何気なく当たり前のように食べていたお米も、子どもたちと、自然の恵みや作っている人への感謝の気持ちを持って噛みしめていきたいと思います。
Culeaf   桃 謙太