2019.9「本能を押し殺せ」

「もう、あいつらとは試合に出たくない。部活を辞める。」
この夏、息子たちの代になり、最初の大会に臨む直前のことだった。
気の弱い息子に呆れ、怒鳴りたい気持ちも抑えながら、息子を部屋に呼びだした。
「負けたら、全部俺のせいにされるんだ。バスケが楽しくない。」
涙をポロリと流しながら事情を話しだす息子。
ここ数年、区で上位に入ってきた息子の学校は、メンバー同士が叱責ながらもチームを引っ張ってきた。しかし、“プラスの声かけ”をし合えないと本当に強いチームにはならないと、変わろうとしていた時でもあった。
「やっぱり、あいつらは変わらない。俺はクラブチームに行く。」
しかし、なかなか変わらないチームの文化に我慢がならず、部活を逃げ出そうとしていたのだ。
チームスポーツで、誰かがミスをしたら、
「何やっているんだよ!ちゃんと取れよ!決めろよ!」
と感情的になるのは、誰もがもっている“本能”であると思います。それを押し殺し「ドンマイ」とプラスの言葉に変えるのは血気盛んな中学生には特に難しいものです。それに残念なのは、部活の顧問ですら、その本能を押し殺せず、暴言を吐いてしまう姿を対外試合でもしばしば拝見します。普段は言葉づかいや道徳を教える立場でもある先生なのに、勝負のかかったスポーツとなると先生も我慢が効かないのでしょう。
 私も先生ですが、親という立場になったとたん、そういった本能を押し殺せず息子へ叱責することもあり、反省することもしばしば・・・。それだけ本能には力があるとも言えますし、それだけ理性が必要とも言えます。
 人の本能は誰にも見られていない、誰にも注意されない環境で出やすいものです。社長は会社で、先生は部活や教室で、親は家庭で・・・。パワハラ、虐待の発覚が遅れるのもそのためでしょう。では、それらの事態を抑制するにはどうしたらよいのでしょう。残念ながら明確な解決策が専門家でも出ないので、これらの社会問題が消えないのだと思います。しかし、我が家では過去にこんなルールを作ったことがあります。
「“うざい!”と言ったら100円罰金!」
これは見事に成功し、家庭から“うざい”という言葉はなくなりました。

「みんな反省しているから部活に戻ってきて。マイナス発言はしないとルールを決めたんだ。」
チームメイトが弱い息子のためにルールを決めて救ってくれた。
先日の区民大会初戦。ミスが多く逆転される場面もある苦しい展開。息子のミスもあった。イライラしたと思う。そんな中、誰もキレることなくプラスの声をかけあった。プラスの声かけがどれだけ結果に結びつくのか楽しみなほど強くなった。そんなチームが優勝してほしい。

くりーふ まつい